最近、マンガネタが続くなぁ。
別に暖めていたわけでもないけど、たまたまおもしろいものにあたったからかな。
と、そういうわけで、先日の田中政志とはまた違ったタイプの作家のことなど。
黒田硫黄という作家だ。名前からしてインパクトあるなぁ。
田中政志がイタリアン・プログレだとすると、黒田硫黄はジャーマン・プログレだ。わけわからん喩えでごめん。
以前、なにかでこの人の絵が諸星大二郎の影響が感じられる、と読んだことがあり、それ以来気になっていたのだが、なかなかBOOKOFFに出回ってないらしく、ついぞ見かけることがなかった。
それが、最近、「大王」と「黒船」の2冊を入手。例の近所の古本屋だ。ここはBOOKOFFではないのだが、そのせいかかえってマイナーな本をよく見かける。
「怪談人間時計」が2冊並んでいたこともあった。日本広しと言えども、そんな古本屋なかなかないだろう。
そんなわけで、作家論を語れるほど読んでないんだけど、ちょっと感想文など。
さて、この「大王」であるが、一見して好き嫌いの分かれる絵だと思う。
とにかく描線が異常に「黒い」。きっと筆を使って描いているのだろう。
さらに画面を埋めつくすベタ塗りは、作品世界に暗い影を落としている。
それに反して、人物の表情は明るい。明るいというと語弊があるが、背景の暗黒との対比が独特の「空気」を生んでいる。
お話自体は、やや「不条理系」なのだが、人物が明るい顔をしているので、作品のトーンは決して暗くならない。
人物の輪郭を太い線で描き、細部に細かい線(けっこう雑に描いてあるが)で陰影をつける。そういうスタイルの絵が多いが、ペンの描線をのみ使った作品もあり、そのあたりは内容で使い分けているようだ。
女の子が主人公の話が多いのだが、どことなくその表情に宮崎駿の影響が感じられる。細かい描線による陰影のつけかたも、どことなく似てるなぁ。
そういえば、比較的最近、この作者の短編がスタジオ・ジブリ系の監督によってアニメ映画になったそうだ。見てないけど。
「大王」はデビュー作を含む短編集である。
これもストーリーの紹介をしても無意味な作品の目白押しだ。
例えば、「The world cup 1962」という作品は、
昭和37年、小学生の亀子は近所の悪童にいじめられていた。それをかばう彼女を慕う寺の小坊主、小林少年。
しかし、亀子は小林少年を嫌っていた。小林少年は、寺では住職から虐待を受ける身・・・。
などと説明すると、なんとなく滝田ゆうとかそんな感じの人情系、ほのぼの系のマンガかと思われるかもしれない。
しかし、その後、住職はなんらかの抗争に巻き込まれ腹部に銃弾を受ける。住職は、どういうわけか国防上の機密に関わる人物だったようで、「核戦争後の戦略システム」の鍵を小林少年に託して絶命する。
おりしも、中米カリブ海ではキューバ危機が勃発し、全世界を巻き込んだ核戦争が始まる。
「核戦争後の戦略システム」の鍵を握る小林少年は、亀子を救うべく夕餉の最中の彼女の自宅を急襲、拉致し、その鍵を開けるのであるが・・・。
てな、調子で、破天荒なストーリーというかなんというか。
他には、恋人に逃げられた女と、アパートの隣の部屋に住む象との交流(?)を描いた「象夏」だとか、地下鉄の駅からずっとつけてくる熊の話とか、蚊の恩返しの話だとか、そういう言語で説明してもよくわからない作品ばかりだ。
手塚治虫の「メトロポリス」を翻案した作品も収録されている。これも、レッド党のロボットを率いたミッチィが、廃墟と化したメトロポリスで、ケンイチ少年(浪人中)と野球をする、という素晴らしさ。
原作のクライマックス、「摩天楼での死闘」をきっちりはずした展開になっていて、作者の特性がよくあらわれているように思う。
一見、ハチャメチャな設定なのだが、どこか地に足がついたというか、登場人物の人としてのあり様がしっかり描かれていて、読み応えがある。
奇想天外なストーリーに翻弄されながらも、自分を見つめ、あるいは自分を探しながら行動し、泣き笑う登場人物たち。
かと言ってキャラクターに感情移入せずに、突っ放した視点で描き続けるスタイルにただものでない作家の力量を見る。
このあたりが冒頭に書いた、作品のトーンが暗くない所以なのだろう。
この作者の長編作品に「大日本天狗党絵詞」がある。
これも同じような作風は貫かれているが、話が長くなった分、散漫な印象は免れない。この作家のスタイルは中短編でこそ生きてくるのではないかと思う。
また、「茄子」という作品がある。
これは連作短編集なのだが、こちらは非常に日常的なシチュエーションで起こる出来事を淡々と描いた作品で、初期の破天荒さはないが、これはこれで味わい深い。
ただ、デビュー当初の個性的な絵柄がやや洗練されてきて、強烈なインパクトはない。内容にあわせて淡々と描いているのだろう。
あまり多作な人でないようだが、この作家も「見つけ次第購入」リストにしっかり入っている。
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