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2011年6月28日 (火)

クリス・スクワイアの逆襲 : Fly from here / Yes

Fly from here / Yes

Fly_from_here

イエスの新譜が出た。
"Magnification"以来10年ぶりとのこと。
しょっちゅうコンピレーションや発掘ライブ音源などが出ていたので、そんなに間があいているとはついぞ思わなんだ。
メンバーは、スクワイア、ハウ、ホワイト、まぁ順当。
意外にもジェフリー・ダウンズが参加している。
この人は、エイジアがらみでこのあたりの人たちと仕事をしていることが多いので、実は「意外」という印象はあまりなかったのであるが、よくよく考えてみると、"Drama"以来になるようだ。
30年ぶりだな~。
ボーカルはアンダーソンは病欠?で、Youtubeでスクワイアが発掘したというヴェノワ・ディビッドという人。
で、プロデュースがトレバー・ラビンじゃなくってトレバー・ホーン。
おぉ、この面子は、ほぼほぼ"Drama"イエスの復活ではないか。

本作に関する各種レビューを読むと、"Drama"イエスの復活と大々的に報じられている。
クリス・スクワイアの遺恨試合であるかのような言いっぷりである。
発表時の評価が、よほど不本意だったのだろうか。

以前は"Drama"はアンダーソン、ウェイクマン不参加作品なのでイエスとは認めん、という保守的なリスナーも多かったと思うが、それ以降の音楽性の拡散振りを見るにつけ、「古き良きイエス」を体現した傑作と評価が高まってきている(と思う)。
"Drama"は、アンダーソン、ウェイクマン脱退後、「ラジオスターの悲劇」で一世を風靡したバグルスの二人組み(ホーン&ダウンズ)を取り込んで、テクノ+プログレの新機軸を目指した作品としばしば評される。
とはいえ、聴いた感じでは、バグルスっぽいテクノ色は薄味で、むしろ楽曲の骨格は初期("The Yes Album"のころかな)のようにがっしりとして、ハードロック的な豪快さに溢れている(と思う)。

そんなわけで、"Drama"イエスの再現を期待して聴いてみた。
後半の数曲は、なんとなく録音しました、みたいな感じでいささか統一感に欠ける嫌いはあるが、冒頭の組曲では、いかにもイエスらしい音楽が聞かれる。
なかなかいいな、これ。
しかし、"Drama"の続編かというと、そんなでもなく、意外にも、むしろ"ABWH"を想い起こさせる。
おっかしいなぁ~。メンバーは"H"しかかぶっていないのだが・・・。
気のせいかな。

新加入のディビッドは、確かにアンダーソンっぽい雰囲気もあるが、「そっくりさん」というほどではない。
下手なボーカルではないと思うが、とりたててすごいこともない。
どことなく、"Drama"でのトレバー・ホーンに通ずるものがあるような気もする。
写真を見る限り、風采の上がらない普通のおっさんでしかないのだが、これからどうなってゆくのだろう。

というわけで、期待はちょいと裏切られたが、老いてますます盛んなスクワイア爺さんでした。

Kc_projekct

A Scarcity of Miracles / A King Crimson ProjeKct

ついでに・・・というわけでもないのだが、同時に発表されたのが、英プログレ業界のもう一方の雄、キング・クリムゾンはロバート・フリップ翁の新プロジェクトの作品も入手。
「キング・クリムゾン最終形態ついにその姿を現す!」な~んて相変わらずの煽り文句で、過大に期待を膨らませてしまうのが、門徒の悲しい習性か。

メル・コリンズが参加している以外は、いわゆるクリムゾンのメンバーは不在なので(トニー・レビンがゲスト参加している)、"ProjeKct"名義にしているのであろう。
ボーカル、ギターのジャッコ・ジャクスジクという人は、確かマイケル・ジャイルズの娘婿だったのではなかったか。
この人は「21世紀の精神異常バンド」で来日公演をしているので、見たことがあるはずだが、あまり印象にない。

で、聴いた感じは、ゆったりとしたジャズ・ロック?
エイドリアン・ブリュー在籍時の、ちょっと叙情的でメロディアスな曲みたいなのをコンテンポラリーなジャズ風のアレンジでやってみました的な、なんと言っていいのかわからない作品。
フリップ翁は「ヌーヴォー・メタル」をやめちゃったのかな?
決して聴き苦しい音楽ではないので、損した気分にはならないけど、これが「キング・クリムゾン最終形態」と言われても、いささか納得がいかない。

ところで、近年クリムゾン関係諸作のジャケ絵は、同じ人が描いているような気がするが、本作も同じような感じのイラストだ。
青木繁の有名な絵(なんだったけなぁ?)をアンリ・ルソーが描いたような。
ちょっと不気味だが、結構好きだな。

【以下、6/29に追記】

・・・と書いてはみたものの、改めて聴きなおしてみると、

>"Drama"の続編かというと、そんなでもなく、意外にも、むしろ"ABWH"を想い起こさせる。

てなことはまるでなく、タイトルとなっている組曲に関しては、楽曲、アレンジ、サウンド、演奏ともに"Drama"の続編といっても差し支えない。
"ABWH"とはだいぶん違う。
あえて、似ている点を挙げれば、
「イエスに関与したメンバーが『イエスらしさ』を追求して製作した音楽」
という雰囲気が漂っている点だろうか。

今後、アンダーソンが復帰することになったりしたら、この作品の扱いはどうなるのだろうか。
"Drama"なみに冷遇されてしまうとすれば、ちょっと残念かも。
いずれにしても、スクワイアの底力を感じさせる力作である。

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2011年6月13日 (月)

【温故知故】Over the Rainbow

先月号のレコードコレクター誌はレインボウの特集であった。
リッチーやロニー、コージーについて、レインボウ以前、以後の活動について誌面を割いて詳しく解説するのは当然だろう。
しかし、それ以外のメンバーについて、ほとんど言及がないのは、いかがなものか。
2nd"Rising"がハードロック史上に燦然と輝く名盤たりえたのは、キーボードプレイヤーの活躍があってこそだと思うが。
そのキーボードプレイヤーはトニー・カレイ(ケアリーとかカリーとかいろいろ呼ばれているが本当はどうなのだろう)である。
"On Stage"でも素晴らしいプレイを聴かせていたのに、あっさりクビになって、惜しいものだ。
3rdでも弾いていたら、あの作品の評価もずいぶん変わったのではないかと思う。

"Rising"の聴きどころは、レコードだとB面の2曲、"Stargazer"と"A light in the black"であろう。
特に、後者での高速8ビートに乗せてぶりぶりと駆け回る長尺シンセソロは、その直後のクラシカルな高速アルペッジオのアンサンブル(いやぁ、ここのコージーは最高にかっこよい)によるクライマックスを導く。
この後に続くリッチーのソロも彼のキャリアの中で最高の部類に属するものであろう。
楽曲、演奏および歌唱、アレンジ、サウンド・プロダクション・・・録音作品の質を維持するのに不可欠なこれらの要素が、恐らく最高の形で残されたのがこの"Rising"という作品ではないか。
トニーの功績は大きい。

"A light in the black"でのトニーのソロは、パトリック・モラーツによるイエス"Sound chaser"などと並びロック界におけるシンセソロの金字塔だと思う。
"Tarot woman"の導入部のシンセソロも、まぁありがちといえばそうなのだが、劇的な効果を生んでいる。
そういえば、トニーもモラーツも、一世代前の名プレイヤー、例えばジョン・ロードやキース・エマーソンと比べて、クラシック嗜好に乏しく、ジャズやブルース臭いところが特徴かも(トニーはアメリカ人だからな)。

Tony_carey

それはさておき、今回入手したのは、このトニー・カレイのソロ作品である。
89年の作品とのこと。
彼がレインボウをクビになってからどこでなにをしていたのか、ほとんど知識がなかったので、もちろんどういう音楽なのかも存ぜぬ。
ジャケ写真を見て、まぁハードロックはやっていないだろうな、とは思った。
でも、ひょっとして一曲くらいは、ハードインストがあって、ぶりぶりとシンセソロを聞かせているのではなかろうか、と期待はしていた。

ところが、全編アダルトな感じのボーカルナンバー・・・。
結構、歌うまいな。
演奏もほとんど一人でやっているのか。多才な人だな。
案外、いい作品かもしれん。
・・・う~む、往年の熱演は期待していなかったし、予想通りの結末だが、なんだか一抹のさびしさを感じたのであった。

ところで、近年、トニーを含むレインボウOB(とリッチーの息子と)でOver the Rainbowなるバンドを結成したとのこと。
ちょっと期待してみたりして。

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2011年6月 8日 (水)

【温故知故】「過ぎ去りし夏の幻影」と「産児制限」

HMVから誘惑メールが来た。
洋楽CDのバーゲンとな。
こういう機会に、レコードは持っているけど永らく聴いていない作品とか、前々から聴いてみようと思いつつ機会を逃していたCDをぽちぽちと注文してしまう。
な~んか、店の思うツボだなぁ。

そんなわけで、ジャーマンロックの有名どころを2作。
とは言っても、ひとつはベスト盤だけど。

Novalis

Sommerabend / Novalis

76年発表の本作、かつては「過ぎ去りし夏の幻影」という邦題がつけられていたという。
実に秀逸なタイトルだ。あたかも音楽が聞こえてくるようだ。
直訳すれば「夏の夜」ということらしいが、ドイツのような高緯度の地域では、われわれが思い描く「夏の夜」とはいささか趣きが違うのだろう。
ジャケに描かれた仄暗い宵のような雰囲気なのだろうか。

ジャーマンロックといえば、スコーピオンズに代表されるハードロック、メタル系かカン、ポポル・ヴーなどのようなプログレというか前衛色の強いものが想い起こされる。
なんだか、理屈っぽい感じか。
しかし、このノヴァリスは、端正なアンサンブルと抑制の効いた歌唱で、その先入観を裏切る。
ドイツ語による歌唱に引きずられた印象かもしれないが、なんかカクカクした感じで、イタリアン・ロックのような自由闊達なのびのびとした雰囲気はない。
よくレビューで語られているが、朴訥としたロマンティシズムとでも言おうか。
楽曲は「宮殿」クリムゾン風の白玉バッキングキーボードで彩られたメロディアスなものだが、クリムゾン的大仰さ重苦しさ禍々しさは乏しく、もっとこじんまりとした感じ、室内楽的といってもよいかもしれない。
しかし、ぱっと聴いた感じではジェントルなのだが、意外にも個々の楽器は結構ちからの入った演奏をしている。
特にギターは、ギブソン系の歪んだ音でザクザク弾いていて、なかなか気持ちよい。
エフェクターなんかの機材も乏しかった時代だからなのだろうが、アンプ直結っぽいストレートな音だ。
同傾向のドイツのバンドにヘルダーリンというのがあるが、ノヴァリスの方がよりハードロックっぽいのではないかな。

Birthcontrol

The very best of / Birthcontrol

活動期間の長いバンドのようだが、本ベスト盤に収録されているのは、72~75年という短い期間の楽曲である。
恐らく3作品からの抜粋なのだろう。
バースコントロールは、ハードロックバンドともプログレとも紹介されているが、まぁ、両者の境界が曖昧というかそもそもそんな区別がなかったころの音楽である。
こちらは、ドイツっぽい理屈っぽさや実験性がやや感じられるが、どたばたとした仕掛けの多い演奏とパワフルというか妙に力みかえった歌唱のどことないアンバランスがおもしろい。
特に、ちょっとしたスタジオギミックというか、ミキシングでのエフェクト処理が露骨で、時代を感じさせる。
ドラマーが中心メンバーだったせいか、ドラムの音量が大きめで、うるさいといえばうるさいのであるが、ダイナミックであるとも言えなくもない。
キーボードは達者な演奏を聞かせるが、特にシンセサイザーがまだまだ新奇なものだったせいか、アナログシンセのぽよんぽよんぶにょ~とした音でのソロがしつこくって、これもまたよし。
クラフトワークやタンジェリンドリームとの距離はそんなに遠くないという気もしなくはないが、メンバーが体質的にフィジカルな人たちなのだろう、全体に暑っ苦しい感じだ。
そいういう点では、同時期同国のフランピーというバンドに似ているような気もする。

・・・という具合に、同時期のドイツのバンドを2連発で聴いてみた。
どういうわけか、ミキシングの感じがよく似ている。
ライブ感のある音作りとか、楽器のバランスとか。
この時期、この国での流行なのだろうか。

ジャーマンロックといえば、先述の通り、エクスペリメンタルなものを想い起こすが、こういう直球勝負みたいなバンドもいたのであろう。
当たり前といえば当然なことであるが、こういう新しい知見を得るのもまた愉し。
かくして「温故知故」の細道は続くのであった。

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