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2011年2月12日 (土)

タイガーマスク

やっと読めた。

某通販サイトで注文してから、入手するまでは案外早かったが、なかなか読了できなかった。
文庫本サイズで読みにくいということもあったが(悲しいかな、小さい字が読みにくい。老眼が入ってきたのだろう)、やはり、ページあたりのコマが多く話運びがゆっくりしているのと、説明的な書き込みが多く、スピード感を殺しているところが主な原因だろうと思う。

残念ながらプロレスにほとんど思い入れがないので、実在の名レスラーが活躍していても、さほど感動することもなく、淡々と読み進めることができた。
しかし、馬場、猪木はもちろん、「吹けよ風呼べよ嵐」ブッチャーや「スピニング・トー・ホールド」ファンクス、「スカイハイ」マスカラスなど、なじみのあるレスラーが登場し、ややリアルタイムな雰囲気が感じられた。
そういえば、キャメルのCapturedも誰かの入場テーマ曲になっていたなぁ。誰だっけ?(調べてみると前田日明だそうだ)

辻なおきの絵は、劇画以前のリアル少年マンガ風のもっちゃりした感じで、さすがに現代マンガに慣れた目で見るといささか古さは否めない。
ストーリーもなんとなくご都合主義的色彩は拭えないし、後半はやっつけ的に進行し、あれよあれよという間に交通事故で不意に亡くなって終わってしまう。
作品の大部分は試合のシーンで、半裸のマッチョたちが血みどろになってくんずほぐれつ飛び交う絵がこれでもかと続く。
鬱陶しいといえばそうとも言えなくもないが、丁寧に描かれたレスラーたちは、それはそれで見応えがある。

実在のレスラーとの試合(これは普通の試合)や虎の穴が派遣する悪役レスラーやインディーズ系?の奇天烈な覆面レスラーとの奇想天外なデスマッチ(合法的殺人といえよう)が次々と行われ、試合と試合の合間に、タイガーマスクこと伊達直人が素性を隠してちびっこハウスを慰問し、大判振る舞いをする。
ときどき、必殺技を開発するために姿をくらましたりするが、基本はその繰り返し。

さて、話題となっている寄付行為だが、タイガーは決して余ったお金を恵まれない子供たちに与えているのではない。
文字通り命を懸けて稼いだファイトマネーのほとんどを自らの生活を省みず与えているのである。
それが可能なのは、幼少のころから虎の穴で鍛えられたプロレスラーとしての技術と屈強な肉体があってのことだ。
そのような無償の善意を支えているのは、一体何だったのか。
伊達直人少年失踪のきっかけとなったのは、彼の育った「ちびっこホーム」(「ちびっこハウス」の前身)が借金のカタに他人の手に渡ってしまうことであった。
その後、彼は「虎の穴」に拾われ、レスラーとしての修行生活に入ってゆくのだが、そこでの地獄の訓練(入門者のほとんどが卒業できずに死亡してゆくという)に耐え抜いたのも、恐らく金銭至上の価値観に対する怒り、大金を稼げるようになって孤児たちの生活の場を取り戻すという執念があったからであろう。
卒業後、当初はファイトマネーの50%を「虎の穴」に送金するという契約を守っていたが、「ちびっこハウス」の危機に際しその契約を破り、その結果、次々と刺客を送られ、命を狙われることになる。
それでも、「ちびっこハウス」への援助はやめず、暴力団を撃退し、プールを作り、雛飾りを贈り、自らの試合に招待を続けた。
さらには、全国の孤児たちが幸福に暮らせる総合エンターテイメント施設?「ちびっこランド」の建設に着手する。
まさに命懸けの奉仕だ。
しかも、これらの寄付行為は、ひょんなことでハワイの親戚から莫大な遺産を相続した「キザにいちゃん」伊達直人の酔狂で行っていることになっている。
つまり、タイガーその人が経済的援助を行っていることを健太たち、ちびっこハウスの孤児たちは知らない。

う~む、善意もここまでくると、ほとんど宗教的色彩を帯びてくる。
直人の正体に気がついているルリ子さん(と若槻先生)が崇拝に似た感情を抱くのも無理のないことだ。
そもそも殉教者のようなこのような命懸けの奉仕が誰にでも出来るわけはない。
だからこそ、伊達直人を名乗る市井の善意は価値があるのだろうと思う。

タイガーが飛行機に覆面着用で搭乗していたり、「虎の穴」本部に馬場、猪木らが大挙して押しかけたり、「それはないやろ~」という突っ込みどころも満載ではある。
直人の妄想の中のビキニ姿のルリ子さんが、意外にマッチョだったり(^^;)
そういう壮大なホラ話での笑いを凌駕してあまりある感動がこの物語にはある。
伊達直人は、完全無欠のヒーローではない。
試合中にも「どうしてこんな苦しい思いをしてまで・・・」と苦悩するひとりの青年である。
そんな人間くささがこの浮世離れしたファンタジーに血肉を与えているのだろう。
案外、深い話だ。

Ts3g0198

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