裁判所に行ってみる。
これまでの人生、いろいろあったようで、実は割と平凡な小市民として生きていた。
まぁ、大部分の人がそうであるように、わたしも法廷なんてものは、映画やテレビで見るもので、実際にこの目で裁判を見るなんてことはこの先ないだろう、なんて高を括っていた。
ところが、裁判所に行って、裁判というものを体験することになろうとは・・・。
とはいえ、裁判員に指名されたのでもなく、原告や被告として法廷に立ったわけでもなく、ましてや判事検事弁護士になったなんてこともなく、ただ一傍聴人として傍聴席に座って裁判の成り行きを見守っていただけなんだけど。
裁判の内容については、差し障りもあるので、ここでは伏せておくが、仕事関連ということにしておこう。
事前に弁護士の先生に訊いてみた。
「傍聴に行ってもいいですかね?」
「あ、全然大丈夫ですよ」
「予約とか手続きはいるんですか?」
「いや、当日裁判所に行っていただければ別に手続きはないです」
「『○○先生、がんばれ~!』とか言ってもいいですか?」
「あ、それやったらつまみ出されますよ」
というやりとりの末、傍聴に行くことにした。
開廷の時間がよくわからなかったので、当日、9時に裁判所に行ってみた(ちゃんと確認しておけよ)。
入り口の自動ドアをくぐると、ただっぴろいロビーになっている。
ひと気がない・・・。
同じ官公庁でも市役所とか県庁とかと違う。
しかし事務室の中では、なんだか職員の人たちが忙しそうに立ち働いている。
ただ、案内カウンターの人は暇そうだ。このあたりは一般の官公庁と同じだ。
「今日の裁判の予定とかわかりますか?」
と訊くと、ほぼ無言でカウンターに置いているバインダーを指した。
そのバインダーに今日の裁判の予定が書いてあった。
一日にこんなにたくさんの裁判をやってるのか。ほとんど30分に一回。
しかも開廷時間は10分とか、そんな単位だ。
その上、法廷の数も想像以上だ。
一階と二階でそれぞれ10以上の法廷がある。
世間でこれほどの数の事件が起こっているのか。
しかし、その大半が民事訴訟で、しかもお金の貸し借り、払え払わぬの争いが多い。
のほほんと生きている自分の知らぬところで、これほどに法廷闘争が繰り広げられているとは・・・。
感慨を深めて、傍聴すべき裁判の時間を確認すると10時半開廷だった。
ありゃあ、だいぶん時間が空くなぁ。
というわけで、裁判所の内部、周囲を探検してみた。
ひと気のない廊下を歩いていくと、どこからとなくテレビの音声が聞こえてくる。
売店からだった。
やっぱりあるんだな、こういう施設が。
大きな病院にある売店みたいな感じで、店番のおばさんが二人、ヒマそうにテレビを見ていた。
実際ヒマなんだろう。
タバコが吸いたくなったので、喫煙室に入ってみた。
建物は新しく、とても清潔に手入れされているのだが、ここだけ妙に小汚い。
まぁ、喫煙室ってタバコの煙で壁面が薄汚く汚れているものだが、それにしても、他との落差が激しい。
きっと喫煙室だからあまり掃除とかしていないんだろう。
喫煙者の立場って不当に貶められているような気がする。
「人事課能率係長」という役職の人がいるのだな。
ということは「人事課能率係」という部署があるのだろう。
なんの「能率」なんだろうか。
謎だ。
さて、ここが当該の法廷だ。
法廷の様子を写真に取るのはご法度らしいから、閉廷後に撮影したものだ。
書記の人がいたので、「こらこら。写真撮ったらダメ」とか怒られるかと思ったが、何も言わなかった。
たぶん閉廷後だからOKなのだろう。
裁判そのものは、あっと言う間に終わった。
開廷直前に弁護士の先生と合流して、法廷に入っていった。
先生は、なにげに傍聴席と法廷を区切る柵(一部が押し戸のようになっている)を押し開けて、柵の中に入っていく。ほんとに何気なく、という感じだ。
まぁ、弁護士の先生は、これが仕事で常時10件程度の裁判を抱えているらしいから、いちいち気合を入れたり、天を仰いで十字を切ったりはしない。当たり前か。
原告代理人が左側、被告代理人が右側に座り、開廷を待つ。
その直後、判事3名が奥の壁の向こうからすっと出てきた。
これまた何気なく不意に現れた感じだ。
おもむろに開廷を告げ、裁判は始まった。
まず原告代理人が訴状を読み上げ、判事が争点を被告代理人に確認する。
いくつかの争点について判事が双方に確認、意見の有無を訊き、そして次回の日程について決めたら、それで閉廷。
あっけないなぁ・・・。
ものの10分もかからない。
裁判ってこんなものか。
後で弁護士の先生に訊いてみたら、やっぱり初回はあんなものらしい。
次回は来月。
しばらく裁判所通いが続きそうだ。
ところで、アメリカは訴訟社会ときく。
なんとなく想像の話だが、アメリカ人って自分の権利を主張することが好きな国民ではなかろうか。
だから、訴訟が好きなのだろう。
一方、イギリス人は裁判が好きな国民みたいな気がする。
ああいう形式を重んじることを大切にしているような感じ。
あくまでこれも想像なんだけど。
そういえば、「インドへの道」というイギリス映画をだいぶん前に見たことがある。
植民地時代のインドで、支配者階級の英国人女性と被支配者階級のインド人男性の淡い心の交流の物語か、と思ったらいきなり社会派映画になってしまうというなかなかヘヴィーな映画だった。
ただ、映画の各所に見られるインドの風景、風物は目を見張る美しさがあった。
それはさておき、この映画のクライマックスは裁判のシーンで、鬘を被った判事がなかなか印象的であった。
それ以来、イギリス人は裁判好き(しかも格式ばった)、という先入観ができてしまった。
さて、「裁判」を英語で言えば、"The trial"。
まさにその言葉をタイトルにした曲がある。
Pink Floydの傑作"The wall"に収録されていて、全曲のクライマックスに位置する曲である。
ロックスターとして名を成した主人公"Pink"が錯乱の果てに法廷で裁かれるという悪夢のような曲だ。
フロイドの曲としてはめずらしくメンバー以外の人が作曲にクレジットされている(プロデューサーのボブ・エズリンだ)。
「ザ・ウォール」って大ヒットして名作の誉れ高いが、レコードだけ聴いても実はよくわからない。
映画版を見て、はじめてストーリーが理解できた人も多いかと思う。
わたしもそうだった。
まさしく悪夢のようなジェラルド・スカーフの手になるアニメーションによって繰り広げられる「ピンク」の裁判は「壁」の破壊によって終わる。
オペラ風のコーラスとオーケストラを配したアレンジは、フロイドの楽曲の中で異色であり、非常な盛り上がりをみせ、強い印象を残す。
なるほど、ロジャーが、もうやるべきことはやり尽くした、とフロイドをやめたのも頷ける。
・・・そこで、ピンク・フロイドを味わい尽くそう、というイベントを挙行することになりました。
いやぁ、長い前振りだったなぁ。
そんなわけで、「プログレ普及会」の第二回総決起集会を敢行します。
今回は趣向を変えて、お題は「リック・ライト追悼 ピンク・フロイド・セッション~目標は『狂気』全曲演奏」。
日時:2009/03/14(土)
場所:京都 烏丸丸太町 陰陽(ネガポジ)
時間:開場:午後6時半 開演:午後7時
チャージ:¥2000(ドリンク、フード別)
フロイドの名曲を普及会メンバーで演奏します。
セッションと言いつつ、きちんとリハもやって臨みます。
ぜひ観戦に来てください。
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