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2006年11月11日 (土)

「創世記機械」

さて、久しぶりの記事である。
最近マンガネタが続いているので、あたかもわたしは「マニアックなマンガばかりを収集しているハードコアなマンガ読み」であるかのごとき印象を世間に与えてしまっているようであるが、そんなことはないのだよ。

という訳で、今回は「字のいっぱい書いてある本」の感想文だ。J・P・ホーガンの1978年の作品である。日本語版は1981年が初版になっている。
Souseiki J・P・ホーガンといえば、「ハードSF」の作家として語られているようであるが、まさに、ハードで、サイエンスである。
この人の本は、だいぶん前に(といってもオトナになってからだが)、知人に借りて読んだ「星を継ぐもの」に始まる「ガニメアン」シリーズが初めてだった。そのあまりに奇想天外なお話と、それにもかかわらず、非常に説得力のある(なるほど、そういうことがあってもおかしくない、と思わせる)科学的説明で、ぐいぐいと引き込まれたものである。その後、彼の著作は何冊か読んだが、どれも適度に小難しくって、適度にエンターテイメントしていて、完成度の高い小説だと思った。
「ガニメアン」シリーズとは、木星の衛星であるガニメデから来訪した宇宙人と地球人との交流を主題とした3部作で(続編もあるらしいが)、非常に読後感のよかった印象がある。だいぶん前に読んだので、細かいストーリーは忘れてしまった・・・。
ちなみにこのシリーズの第二作目は「ガニメデの優しい巨人("The Gentle Giants of Ganymede")」というタイトルで、「おぉ、ジェントル・ジャイアントではないか」と反応するのは、プログレ者たるもののお約束である。
ついでに本作「創世記機械」も原題は"The Genesis Machine"であり、まぁ、そのまんまの直訳であるが、プログレ者の琴線に触れるタイトルである。

簡単にストーリーを紹介しよう。
情報通信関係の合衆国政府系研究機関(ACRE)で物理学の研究をしているブラッド・クリフォードなる青年科学者が、とんでもない理論を思いつく。それは時間と空間を超えてエネルギーを出したり入れたりすることのできる座標点に関するモノで、文中には詳しく説明がされているのであるが、わたしのような科学素人には、その説明が科学的にどの程度「ほぉ、なるほど」と思わせるモノなのかはよくわからない。少なくとも素人のわたしが「ふぇ~、なんかよくわからないけど、そうなのね」と納得するくらいの説得力はあった。こういうと、あまり説得力のない説明だったかのように思われるが、そんなことはないぞ、たぶん。
ブラッドは、その理論を論文にしたため、公表しようとするが、その研究機関から「待った」がかかる。彼の研究が軍事的に利用できると見抜いたACREの上層部は、その理論の公表を阻止し、ブラッドに理論の軍事転用に協力するよう圧力をかける。頑固で理想家肌のブラッドは憤慨してACREと対立し、とうとうクビになってしまう。
その間、ほぼ同時に別の研究機関で、とある実験中に不可解な現象を観測した科学者、オーブ・フィリップスは、その現象が、実はブラッドの理論で説明できることを知り、ブラッドにコンタクトをとる。このあたりの描写に今で言うところのインターネットやテレビ電話が使われていて、まぁ、SFだから当然とは言えるが、先見性を感じるところである。
二人の失業科学者は、友情を深め、ひょんなことから国際科学財団に職を得た。この団体は政治機関から完全に独立していて、科学者の自由な研究活動が保証されているのである。ブラッドとオーブは、そこで、自らの理論を証明するべく大規模な実験設備を作り、とうとう居ながらにして地球の内部、月の裏側などを観測をすることに成功する。
一方、当時の世界情勢は、ソ連が分裂し、中共、西アジア諸国などの共産主義国家と結託し、西側自由主義陣営を脅かす、という典型的な東西対立状態で、インドでの内戦を端緒に一触即発の危機的状況に陥っていた。
ACRE(ワシントン=合衆国政府)側もブラッドの理論がとんでもない成果を生み出したことを察知し、国際科学財団に圧力をかけ、その技術を軍事転用させるべくブラッドたちの活動を妨害しはじめる。科学は人類に平和と幸福をもたらすべき、と純粋に信じているブラッドは、妥協を余儀なくされた財団の姿勢に怒り、悩み、そして、ひとつの決断をする。
オーブたちの心配をよそにブラッドは、大々的に彼の理論を軍事転用する手段を開発し、ACRE(ワシントン)側に協力する姿勢をみせる。ブラッドの開発した兵器は、空間を超えて特定の地点にいきなり強大なエネルギーを放射して破壊し尽くすという、まさに「悪魔の兵器」とでも言うべきシロモノであった。
そして、インド内戦の激化に伴い、いよいよ東西全面戦争の局面を迎え、東側の核ミサイル攻撃が開始された。その攻撃を迎え撃つために、とうとう「J爆弾」と呼ばれたこの兵器が発動されたのであるが、その行き着く先は・・・?世界は終末を迎えるのか?

という手に汗握る展開なのですが、いや、結末は読んでのお楽しみ、ということで。
激しい立ち回りや戦闘シーンなどの描写もなく、話は淡々と、一人の研究者であるブラッドとその回りの日常を中心に進んでいくので、きわめて静かな印象である。しかし、ところどころに登場する(似非?)科学的説明や主に会議のシーンでの登場人物の長広舌がポイントになって、話に深みを与えている。
と書くと、なんかつまらない小説みたいだけど、そんなことはないぞ。う~ん、いわゆる活劇ものではないので、そういうのを期待すると、すごく読みづらいかもしれない。
現在では実現不可能な技術が、もし実現したら、という仮定での、一種のシミュレーションものという感じはする。だからこそ、作者の世界観、人間観が色濃くにじみ出て、読後に、ずっしりとしたものが残ります。読み応えあり。

また、エピローグが、しみじみします。物語からだいぶん後の世界での出来事なんですが。これがあるとないとでは、全体の印象がかなり違っていたと思います。人によっては、このエピローグは不要と感じるかもしれませんが、これは作者の科学観、世界観をストレートに語っている部分だと思います。

あまりディテールに触れると、ネタばれになりそうなので、多くは語れないが、昨今の感覚的刺激を強調するあまり、な~んか表層的で、読み応えのない「ミステリー」ものに飽きてしまった人には、お勧めしておきます。
まぁ、かれこれ25年以上前の小説なので、なにかと古びてしまった部分はありますが、古典なんてものは、そういうものでしょう。
かなり違うという気もしますが、かのピンク・フロイドの元ベーシスト、ロジャー・ウォーターズのソロ作品「Radio K.A.O.S」を思い出しましたね。影響受けたのかな?んな訳ないか。

ちなみに、「創世記機械」というタイトルですが、ちょっと見、なんのことかわかりませんが、最後まで読むと、「あぁ、そういうことなのね」としっかりと腑に落ちます。

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コメント

うわ、字いっぱい(;´д`)

投稿: さも | 2006年11月12日 (日) 03時16分

どもども。
ストーリーの紹介なんかすると字数が増えて読みづらくってだめですね(^^;

投稿: 皇帝 | 2006年11月22日 (水) 01時49分

There was a just Injin; and this, Harry, that was come, Deerslayer laid the head of the females, however, was the critical condition of the savages seriously contemplate the risks of an alligator that has all the rest.

投稿: jag clips | 2007年1月 2日 (火) 09時27分

I had given us both.

投稿: achat vente occasion | 2007年1月30日 (火) 13時35分

It was not so apparent to the hour.

投稿: ophthalmologist hornell | 2007年2月 8日 (木) 05時38分

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